【精度の高い治療】ってなに?精度が高い治療は良い治療である。

こんにちは、現役歯科医師兼臨床歯科ライターの管理人です。

銀の詰め物(銀歯)を白くしたい

の記事では、銀歯を白くする際に

・材質がセラミックであること

に加え、

・精度の高い治療

が大切であることを紹介しました。

では、精度の高い治療とはどのようなことなのでしょうか?これは、患者さんにとって最も大切であるにも関わらず、歯科治療というブラックボックス化された作業の中で、実際に治療を行っている歯科医師にしか分からない世界であるのが現実です。

歯科治療は細かい作業の連続ですが、それをどこまで丁寧に行っているかなんて、患者さんには分からないですよね?にも関わらず、歯というのは一生つきあっていくもの。適当な処置は歯の寿命を簡単に短くしてしまいます。大昔のように、「先生」といってぺこぺこし、治療は何をされているかよくわからないけどとりあえず感謝😊! みたいな時代ではありません。歯科医師としても、患者さんを「お客様は神様」と思うのもよくありません。あくまで、歯科医師と患者さんは対等な立場として、よく話し、よく理解し、そしてお互い信頼した上で治療をする・されるのが良い関係性ではないでしょうか?

そんな中でも、きちんとした治療を行っているかどうかの判断基準となるポイントがいくつかあるので、それを紹介しようと思います!

①拡大鏡を使っているか

これは最も分かりやすく、かつ重要なポイントといえます。

zeiss eye mag pro with beam

歯科で使う拡大鏡は、大型のマイクロスコープと、小型で直接ゴーグルやヘッドバンドに装着する双眼ルーぺというタイプのものがあります。

マイクロスコープは根管治療(歯の根っこの治療)や、非常に繊細な手技が求められる歯肉形成の手術などで用いるのが一般的で、普通の虫歯治療やかぶせ物治療では双眼ルーぺを用いるのが一般的です。(→ 【根管治療ってなに?】の記事をご覧ください!)

上の写真は ZEISS 社製のEyeMag Pro という双眼ルーペで、管理人が日々の臨床で使用しているものです。レンズの中間にライトがついており、これで施術部位を照らしながら作業ができ、非常に鮮明な術野を確保できます。

surgitel製の双眼ルーぺ

他にもSurgitel や Heine など様々なメーカーが診療用の双眼ルーぺを販売していますが、価格は概ね30万~60万ほどで、非常に高額ですが、これを用いるかどうかで、作業のクオリティに雲泥の差が生じます。歯科治療は非常に細かい作業の連続であるため、肉眼で行う場合とくらべ、しっかり拡大鏡をつかうと最終的な修復物のクオリティにも大きな差が生じることになるわけです。

処置をする歯科医師がこのようなルーペを使用しているかどうかは、診療中の歯科医師を見れば一目でわかります。倍率は様々で、当然高倍率のほうが精密な作業が可能となりますが、倍率がどれくらいか、というのは置いておいて、少なくとも双眼ルーペを使用しているということは、丁寧な作業を心掛けようという気持ちの表れであるのは間違いありません。

②診療時間をしっかりと確保している

上の写真は左上から、

最初の状態→金属をはずした状態→古いセメントをはずした状態

→中の虫歯を取り除いた状態→神経を保護する材料を置いた状態→新しく材料で補完した状態

→形を整えた状態→シリコンの型どり→セラミックをセットした状態

となっています。

セラミックがセットされるまでの各ステップをまとめた写真になっているわけですが、これらをステップを10分~15分程度の診療時間できちんと行うことができるでしょうか?

当然Noです!

先述した通り、歯科治療は細かい作業の連続です。ひとつひとつのステップを丁寧に行うとなれば、それなりに時間もかかります。内容にもよりますが、最低でも30分、場合によっては1時間程度の診療時間が必要になることもあるため、短い診療時間で患者さんを多く回転させているような歯科医院では丁寧な処置は期待できないでしょう。

勿論、だらだらと意味もなく長い診療をするのもよくありませんが、テキパキと作業をしても、精度の高い治療に拘って治療を行う場合、どうしても時間が必要になるケースが多いということは知っておいたほうがよいと思います。

実際には全く同じ処置をするにも、歯ぐきのコンディションによってかかる時間に大きな差がでてしまうこともあります。例えば、型どりを行う時、歯ぐきからの出血などがあると血がにじんで型がきれいに取れないため、止血を待たなくてはならないこともあります。患者さんがしっかりと毎日歯ブラシをがんばっていると、歯ぐきが引き締まり、処置をしても出血しづらく、スムーズに型どりを行えるわけです。

こういったところからも、患者さんがしっかりと処置の内容や意味を理解して、歯科医師と協力して良いものをつくっていくという共同的なスタンスはとても大切です。歯科医師が一方的に治療を行っても、一時的にはよくなるかもしれませんが、結局患者さんの理解や協力がないとまた良くない状態に戻ってしまう事も多々あるのです。

③型どりにシリコンの材料を使っているか

治療の内容によりますが、最終的に型どりをして技工所でかぶせ物や詰め物を製作するような治療においては、最後に「型どり」を行います。

治療の最終段階だけに、この「型どり」をどれだけ精密に行うか、というのは非常に重要なポイントとなってきます。

実際に最終的な修復物を製作するのは技工士の仕事で、技工士は石膏でできた模型の上で作業を行います。その石膏模型をつくるための型どりが上の右側の写真になります。これは、シリコン製の変形の少ない材料で型どりを行っているため、模型の状態と実際のお口の中の状態(上の左側の写真)の差が非常に小さくなるわけです。

Before
After

しかし、このシリコン製の型どりの材料ですが材料代が非常に高価なため、歯科医院によってはシリコンではなく、保険治療で使うのと同じ材料(具体的には寒天など)を使用しているところも少なくありません。

型どりの材料代をけちり、安価な材料で型をとれば経費は削減できるかもしれませんが、結果→模型の精度が悪い→できあがる修復物の精度が悪い→歯と修復物の間に隙間ができる→変色や2次的な虫歯を生じる という経過に帰着するわけです。

良いものを作るために、良い材料を使っているかも重要なチェック項目ですね。

まとめ

さて、いかがでしょうか?

他にも

・常に切れ味のよい道具を使っているか、そのようなメインテナンスが行き届いているか?

・かぶせ物治療の際などは、しっかりと仮歯の調整をおこなっているか?

・根管治療にはラバーダムや顕微鏡をつかっているか?

など、診療内容によってはもっと多くのチェック項目がありますが、おおまかには「拡大視して、しっかりと時間をかけ、良い材料をつかっていれば」最低限の診療クオリティが守られていると考えてよいでしょう。

今後自費診療をやろうと考えている方や、信頼できるかかりつけ医を探している方は、ひとつ参考にしてみてはいかがでしょうか?自費診療を沢山やっているから、症例が多いから、広告が沢山でているから、という理由はあてになりません。その歯科医院や歯科医師がなにをアピールポイントにしているか、しっかり見極めて、場合によっては初診相談などで実際に足を運んで決めていくのがよいかと思います。

2件のコメント

  1. […] 【精度の高い治療って?】で紹介したような拡大鏡を使うことで歯科治療の精度は格段にあがりますが、根管治療を行うためにはこのような双眼ルーペタイプの拡大鏡でも不十分です。上の写真のような大型の歯科用マイクロスコープをつかうことで、ようやく根管の中をしっかりと確認しながら処置をすることができるのです。 […]

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