【矯正治療の装置の種類】 どんな装置があるの?


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こんにちは、現役歯科医師兼臨床歯科ライターの管理人です。

今回は、「矯正治療の装置」について記事を書こうと思います。矯正治療といっても、いわゆる成人矯正から小児矯正まで、色々な「矯正治療」があるのですが、小児矯正は装置の種類が豊富で、機能性の装置とよばれるものが沢山あります。これはまた別の機会にご紹介するとして 今回は成人矯正で日常的に使用される装置をご紹介したいと思います!

各々の装置の特徴も軽く触れておきますので、ご自身が矯正治療をはじめようか悩んでいる方などは、是非参考にしてみてください!

矯正装置のBig2

さて、それでは早速成人矯正を担うBig2を発表したいと思います。

1つ目は、

マルチブラケットシステム

です。マルチブラケットシステム?なんじゃそりゃ、聞いたことないぞ、という方が多いと思いますが、これはつまり「ワイヤー矯正」のことです。昔から使われてきたオーソドックスな装置といえます。ひとつひとつの歯の表面にブラケットとよばれる装置を接着剤で装着し、その装置にワイヤーを通すことで歯の位置をコントロールするシステムです。

マルチブラケットシステム

 

2つ目は

マウスピース型矯正装置

です。

マウスピース型矯正装置はinvisalignに代表される取り外し可で透明な装置。少しずつ形の違うマウスピースを交換していくことで歯の位置をコントロールしていきます。

実はマウスピース型矯正装置にも様々なメーカーが参入しており、最も有名なivisalign(AlignTechnology社)以外にもいくつか有名なものがあります。しかし、発送方式やマウスピースの材質などに違いはあるものの、形態の違うマウスピースを少しずつ嵌めていく事で歯を動かすという根本的な原理はどれも皆同じです。

「マルチブラケットシステム」「マウスピース型矯正装置」

が矯正装置のBig2です。ただし、マルチブラケットシステム 即ちワイヤー矯正は更に

・表の装置(ラビアルワイヤー)

・上だけ裏側の装置(ハーフリンガル)

・裏の装置(フルリンガル)

に分けることができます。つまり、

ということです。

先ほども留意しました通り、矯正装置 はこの他にも沢山の種類があります!これはあくまで「成人矯正の日常臨床で」ということに絞っての「矯正装置」です。

では、上から順番に少しだけ細かくみていきましょう。

表側のワイヤー矯正 ラビアル装置

これは最も歴史が古く、オーソドックスな矯正装置です。歯の表側に装置を接着剤で装着し、これらの装置=ブラケットにワイヤーを通していきます。歯の表側の事を専門用語では唇側・頬側といい これを英語でいうと“labial” というので表の装置の事をラビアルといったりします。

メタルのラビアルワイヤー装置

 

審美性に配慮した白いラビアルワイヤー装置

表の装置ですが、実は各メーカーから星の数ほどいろいろな種類の装置が販売されています。矯正をする歯科医師はこれらの装置の中で自分の好みの装置を購入し、患者さんの歯に装着するわけです。細かい設計などに違いは沢山ありますが、患者さんにとって関心のあることがあるとすれば装置の材質でしょう。装置の材質には金属製のものと高分子やセラミック製の白いものがあります。

当然金属製の装置を装着すると上の写真の1枚目のように、かなり目立つことになってしまうので今のご時世あまりこれをチョイスする方はいません笑 ただし目立つというだけで、性能が劣るとかそういったことは全くありません。矯正をするというのは、僕は偉いなぁと思うので、個人的にはメタルでもいいのに・・・と思ったりしますが・・・

表の装置は歯の表面に装置が付くため、やはりどうしても目立ってしまうものですが、それでも極力違和感をなくしたものが白い材質でできた審美的な装置です。2枚目の写真のように、確かに装置が付いているのは分かりますが、非常に審美性に配慮された印象になります。

表のワイヤー装置のメリット・デメリットは

メリット

  • 最も古典的ではあるが、その分治療法も確立されている
  • 治療効果が安定している
  • 歯のコントロールがしやすい
  • 治療の効率がよく、結果期間も早く終えられる可能性が高い
  • 裏側の装置に比べれば操作がしやすく、毎回の診療時間が短め
  • 複雑な症例、難症例にも適応しやすい
  • 裏側矯正に比べると費用を抑えられる

デメリット

  • 目立つ(特にメタル装置!!)
  • 唇の裏側などに口内炎ができたりする→必ず慣れてそのうちなくなります
  • ワイヤーが粘膜に刺さったり、装置が取れるなどのトラブルがある
  • 時間が長く経つと、装置と歯の境界線などが着色してきたりする
  • 歯磨きがしづらいため、虫歯や歯周病のリスクになる
  • マウスピースに比べると、毎回の診療時間は長い
  • 毎月、最低でも2か月に1回程度の来院頻度が必要

なんだかんだ、まだまだ「矯正といえば コレ!」という安定した地位を築いているといえます。

半分だけ裏側矯正 ハーフリンガル装置

ハーフリンガルとは、”half”=半分 ”lingual”=舌の ということで、上の歯列は裏側(舌側)で、下の歯列は表側に装置がつくワイヤー矯正のことです。

ハーフリンガル装置

このように、正面から見ると、まるで上の歯列には装置がついていないようですね?ただし、上の歯列も咬み合わせの面からの写真をみると、、、

ハーフリンガル装置 上の歯列

このように裏側にびっしりと装置が付いています。

下の歯列に関しては先述の「表の装置」と全く同じものを用います。ただし、ハーフリンガルにするということは見た目に気を使いたい、ということなので、ハーフリンガルの下の歯列にメタルの装置を使うことはありません!

また、上の歯列に装着する裏側の装置は、裏側専用に設計されています。これは、当然裏側なので白くする意味がないためほとんど全てが金属製の装置です。表側ほどのラインナップはありませんが、やはり各メーカーから様々な種類の裏側用装置が販売されており、これも歯科医師の好みで使いわけられています。

患者さんからしてみれば何が違うのか全然わからないものですが、例えば同じ「ハーフリンガル」を標榜する歯科医院でも、使ってる装置やワイヤーは全然違うというわけですね。こればっかりは、あまり気にされなくてよいかと思います。

ハーフリンガル装置のメリット、デメリットは

メリット

  • 目立ちにくい→笑った時は上の前歯が見えるため(逆に笑った時に下の歯がメインで見えるような笑顔の方にはあまり意味がない)
  • 下の歯列は表なのでコントロールしやすい
  • 表の装置とフルリンガルのいいとこどり
  • 複雑な症例や難症例にも適応できる

デメリット

  • 裏側の装置は表に比べると歯のコントロールがしづらい
  • 費用が高くなりがち
  • 治療の最終段階の微調整がききづらい
  • 裏側の装置は外れてしまった際や、貼り替えをしたい際に面倒(→結果時間がかかる)
  • 必ずしもそうではないが、治療のトータル期間が長引きがち
  • ワイヤーが粘膜に刺さったり、装置が取れるなどのトラブルがある
  • 時間が長く経つと、装置と歯の境界線などが着色してきたりする
  • 表の装置より更に歯磨きがしづらいため、虫歯や歯周病のリスクになる(特に裏側!)
  • 表の装置に比べ毎回の診療時間は長くなりやすい
  • 毎月、最低でも2か月に1回程度の来院頻度が必要

裏側のワイヤー矯正 フルリンガル装置

先ほどが”half”だったのに対し、こちらは”full”=全て “lingual”=舌の なので、つまり上の歯列も下の歯列も裏側に装置がつくワイヤー矯正のことです。

正面から見た時の写真をみてみましょう。

フルリンガル装置

このように、「正面から見た際の見た目」という意味ではフルリンガルの装置が最も審美的といえます。全く何もついていないように見えますね。この状態であれば、よっぽど大きな口を開けて笑わなければ、人に気づかれることなく矯正治療をすすめることができます。

咬み合わせの面からみてみると、、、、

フルリンガル 上の歯列
フルリンガル 下の歯列

どうでしょう?裏側にびっしりと、上も下も装置がついていますね。これがフルリンガル装置です。装置の種類はハーフリンガルで上の歯列についていたものと同じで、基本的に全てが金属製の、裏側専用の装置です。

フルリンガル装置のメリット、デメリットは

メリット

  • 目立たない! 見かけ上、最も審美的な矯正装置
  • 矯正歯科医師の技量によりますが、複雑な症例や難症例にも適応できる

デメリット

  • 裏側の装置は表に比べると歯のコントロールがしづらい 特に下の歯は!
  • あらゆる矯正装置の中で最も費用が高くなる
  • 治療の最終段階の微調整がききづらい
  • 裏側の装置は外れてしまった際や、貼り替えをしたい際に面倒(→結果時間がかかる)
  • 必ずしもそうではないが、治療のトータル期間が長引きがち
  • ワイヤーが粘膜に刺さったり、装置が取れるなどのトラブルがある
  • 特に下の歯列の裏側装置は舌への刺激が強く、非常に強い違和感がある→いずれは慣れますが
  • 時間が長く経つと、装置と歯の境界線などが着色してきたりする
  • 表の装置より更に歯磨きがしづらいため、虫歯や歯周病のリスクになる(特に裏側!)
  • 表の装置に比べ毎回の診療時間は長くなりやすい
  • 毎月、最低でも2か月に1回程度の来院頻度が必要

このように見ると、フルリンガル装置はメリットに比してデメリットが多いですね・・・ 勿論、臨床的な細かい点ではリンガル装置にもメリットはもっと沢山あります。例えば、表の装置に比べると装置と装置の距離が近いため、歯に対してダイレクトな力がかかりやすい とか 内側に装置が付いているため、歯列の内側に向かって引き込む力が優位だ とか、、、

ですが、あくまで臨床的な項目としては、やはり目立たないということが唯一のメリットと思っていただいてよいかと思います。

マウスピース型矯正装置

マウスピース型の矯正装置は AlignTechnology アラインテクノロジー 社が提供する invisalign インビザライン を代表とする、透明な取り外し可能な矯正装置です。

日本ではインビザラインが最も有名かつシェアも広いのですが、他にも

・Ormco オームコ 社の insignia インシグニア

(https://insigniasmile.com/treatment-choices.php)

・Dentsply Sirona デンツプライシロナ 社の SureSmile シュアスマイル

(https://www.dentsplysirona.com/sv-se/explore/orthodontics/suresmile-aligner.html)

・Straumann ストローマン 社の ClearCorrect クリアコレクト

(https://www.straumann.com/clearcorrect/jp/ja/home/doctors.html)

などが世界的な歯科医療現場では使われています。

マウスピースの材質、シミュレーションソフトなどのソフトウェア環境、発送方法など様々な点に違いがありますが、

「少しずつ形の違うマウスピースを交換していき、歯列を整えていく」という根本的な原理はどれも皆同じです。

色々な種類があると迷ってしまうかもしれませんが、日本国内でマウスピース矯正を考えるのであれば、インビザラインで間違いはありません。マウスピース矯正の場合、ワイヤー矯正よりもメーカーからのサービスやアフターケアなどのインフラがどこまで整備され、普及しているかという点も、治療をスムーズに進めていく上で非常に重要です。現在インビザラインは多くの歯科医院で採用され、実績も出ています。マウスピース矯正がご自身の矯正治療に最適かどうかはまた別問題ですし、マウスピース矯正特有の問題点も多々提起されているのも事実ですが、マウスピース矯正が適応できるのであれば、インビザラインが実績やインフラ整備など諸々を鑑みて最も安定しているのではないかと思います。

invisalignが装着された状態のスマイル

また、マウスピース型矯正装置の見た目ですが、「透明なマウスピースだから全然目立たないでしょ?」と思われがちですが、実はインビザライン治療では歯の表面にアタッチメントと呼ばれる小さな突起を装着します。マウスピース側にはこのアタッチメントにはまるような窪みが設定されており、これらの干渉によって歯を効率よく動かすという工夫がされています。

従って、上の写真のようにアタッチメント部分が少し目立つといえば目立つというのが実際のところです。しかし、アタッチメントをどの歯に設定するかなどは治療計画などによるので、患者さんの希望によっては削除することも可能で、目立ち具合もそれによりけり といえます。いずれにせよ、従来のワイヤー矯正に比べたら、目立つといってもそれほどではありません!

マウスピース型矯正装置のメリット、デメリット

メリット

  • ワイヤーに比べて目立たない。
  • 取り外しが可能なので、歯ブラシなどを非常にしやすい→なので虫歯や歯周病などのリスクが非常に低い
  • 毎回の診療時間が短い(ただし、内容によっては時間がかかることもある)
  • 来院頻度が少ない(治療の流れに乗れば2~3か月に1回でもOK)
  • 装置が外れたり、ワイヤーがささるなどのトラブルがないため、応急での来院などが非常に少ない
  • ご自身で矯正を進めているという感覚がある

デメリット

  • ご自身での管理が必須となる(装着時間やマウスピースの交換など)
  • 1日あたり20時間以上の装着がベター→これができないと歯が動かない
  • インビザラインシステムをある程度理解していただいた方がよい
  • システム上、歯列のスキャンやシミュレーションの作成・修正、マウスピースの発注・発送などの手続きを踏まなければならない
  • 途中で治療計画を変更する際や、マウスピース作り直しをする際は、このような「手続き」をその都度行う必要がある
  • その為、治療途中での虫歯処置など歯の形が大きく変わる処置はできないか、したとしたらマウスピースの作り直しが必要になる
  • 複雑な症例や難症例、抜歯症例ではマウスピース単独での治療に限界がある場合がある→その際はワイヤーの併用などを考える必要がある
  • 歯を大きくねじったり、垂直的に大きく引っ張り出す・押し込むような動きは苦手
  • 見かけ上の歯の長さがあまりない方(歯が短い方)では、十分なフィットが得られず、うまく動かせないことがある
  • マウスピースはプラスチック系の材質なので、使っている内に汚れたり破損したりすることがある→基本的には7日~10日程度で交換するもの

一見とっても良さそうなマウスピース矯正。ワイヤーを付けなくても矯正できる!しかも目立たない! と飛びつきがちですが、注意しなければならない点が沢山あります。

基本的には装置を付けずに矯正治療を進められるのであれば、虫歯や歯周病といった観点からもマウスピース矯正は非常におすすめです。しかし、従来のワイヤー矯正と最も異なる点は、マウスピース矯正は「患者さん自身が主導して管理する装置」であるということです。矯正歯科医師の仕事は正しいシミュレーションを作成するところまで。あとはしっかりと管理していただき、患者さん自身で治療を進めてもらうのです。したがって、このような管理がしっかりとできることが大前提となります。マウスピースの装着時間や交換などができなければ、歯は全く動きません!

また、最近はマウスピース矯正の市場が拡大しつつあるせいもあり、ワイヤー矯正などの経験のない歯科医師が手軽にワイヤー矯正に手を出してしまうケースが問題となっています。非常に簡単な症例などでは、矯正治療に関わる高度な知識やリスクマネージメント能力がなくても、患者さんさえしっかり使ってくれれば治ってしまうようなケースも確かにありますが、怖いのはそうでない場合です。

マウスピース型矯正装置はメリットも多いですが、従来のワイヤーとは歯に対しどのように力がかかるか、といったメカニクスが全く異なります。そのため、マウスピース単独では改善が難しいケースやリスクが大きいケースをしっかりと見極め、適切なツールとしてマウスピース矯正を用いることが大事なのですね。



まとめ

さて、いかがでしょうか?

今回は成人矯正で日常的に最もよく利用する

・マルチブラケットシステム

・マウスピース型矯正装置

について、その概要を本当にザックリですが見てみました。

残念ながら、「全ての点においてNo.1の装置」というものは存在しません。各個人の咬み合わせや骨格的な特徴を鑑みて、また費用や許容できる期間、はたまたご自身の性格にいたるまで、様々な要素を包括的に考慮して、そのひとにとって一番良い装置を選ぶのが良いでしょう。

どうしてもメリットばかりに目がいきがちですが、デメリットやリスクもしっかり認識した上で、担当の歯科医師とよく相談し、ある程度装置の特性を理解して治療を受けましょう。特に矯正治療は期間も長いです。途中で不信感により転医を希望されるケースなどもよくありますが、いままで見てきたように矯正に使う装置などはその歯科医院・歯科医師によって様々ですし、治療の方針なども歯科医師によって様々です。正直途中で矯正治療を引き継ぐというのはかなりやっかいな案件になりますので、ベストは治療をはじめた医院で装置を外し、アフターフォローまでお世話になることですね。そのためにはお互い信頼関係を築き、対等な立場として治療を進めることです。ご自身の矯正装置に対し正しい理解をすることは、その治療に対し安心感を得ることにもつながります!是非、その参考にしてみてください!

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