【銀歯の中は虫歯だらけ?】保険治療の実際とやり直しの実際(セラミック治療)

こんにちは、現役歯科医師兼臨床歯科ライターの管理人です。

以前の記事では

・銀歯のやり治しをするのであれば材質はセラミックがおすすめであること

銀の詰め物(銀歯)を白くしたい

・その際には精密な治療をすることでより長持ちするものができること

精度の高い治療ってなに?

を書きました。拡大鏡をつかってしっかり時間をかけ、良い材料を使って仕上げる事で、より長持ちのする治療ができることをお伝えしました。

これに関連して、具体的に銀歯のやり替えの実際をみていきましょう。


銀歯のやり治しを希望

左上の4番目~7番目の奥歯

さて、こちらの写真は左上の奥歯、前から4番目~7番目の歯を写したものです。

どの歯にも銀の詰め物がされていますね。

レントゲンをみてみましょう。

処置前のレントゲン写真
処置前のレントゲン2

ぼそぼそとしてわかりづらいですが、銀歯の下にはうっすらとセメントのようなものがうかがわれます。

銀歯を取り除きます

では、まずは銀歯を取り除きましょう。

銀歯が除去されたところ

どうでしょうか?みた印象としては、「なんか汚いな」と思うのではないでしょうか。ぼくはほとんど毎日のようにこうやって保険治療の銀歯を外していますが、銀歯を外した下が「きれいで特になにもする必要なし」ということはほとんどありません

保険治療の銀歯の模式図

上の模式図のように、古いプラスチックの材料では虫歯が進行し、銀歯の下には粗悪なセメントの裏打ちや、更にその下で虫歯が大きくなってしまっていることが多く見受けられます。

古いセメントなどの材料、虫歯を全て取り除く

かならずしもなんでもかんでも取り除けばいいというわけではなくて、例えば虫歯がかなり深いことが予測される場合はあえて全て取り除かないこともありますが、今回は、全ての材料と虫歯を取り除くことにします。古い材料を取り除くのは、その下に虫歯ができてしまっている確率が非常に高いからです。

古い材料・虫歯を取り除いた状態

まだ黒い部分が残ってるじゃないか と思うかもしれませんが、虫歯というのは色ではなく「硬さ」で判断します。例え黒い色をしていても、歯の健全な硬さを保っていればそれは虫歯ではなく、ただの着色と判断できます。

古い材料・虫歯を取り除いた状態

上の図がこの状態の模式図です。つまり、この状態が「健全な歯だけが残っている状態」というわけですね。実際にはこの行程にけっこう時間がかかります。不用意に削り過ぎては神経が出てしまうおそれがありますし、逆に虫歯を残すこともできないからです。

ここで重要なのが4番目・5番目・7番目は(歯ぐきの上に)あまり歯は残っていない状態ということです。このように、悪い部分を全て取り除いた結果、残る歯が少なかったり、薄かったりした場合は全体を覆うタイプのかぶせ物を製作し、それなりに歯が残る場合は一部分だけを詰める詰め物タイプの修復物を製作することになります。

一般的に強度は 詰め物<かぶせ物 なので、奥歯はかぶせ物にしてしまったほうがよかったりもするのですが、かぶせ物の場合削る量が多くなってしまうので、微妙なラインの場合は患者さんと相談し、どちらにするかを決めていきます。明確な基準というのはないのですね。

裏打ちの修復をする

古い材料・虫歯を全て取り除いた状態は、まさに虫食い状です。ボコボコと穴だらけになり、このままではかぶせ物や詰め物を製作することはできません。

かぶせ物や詰め物は、型どりを行い、模型上で製作するため、ある程度規格化された形態に整える必要があるのです。

新しい材料を築盛した状態

上の写真が新たな材料で虫食い状になってしまった部分を埋め、築盛した状態です。これにはコンポジットレジンとよばれるよな材料を使うと、2次的な虫歯などの発生を極力抑えることができますが、材料が高価なため、安価なセメントなどで代用されるケースも多いです。

形態を整える

ここまでが、一番時間がかかり、大切な部分となりますが、その割には患者さんには全く見えない部分になるため手を抜かれがちになります。

逆にここまでの処置をしっかりと行うことで、安心して上部のかぶせ物や詰め物をつくることができるわけです。

形態を整えた状態

上の写真が形態を整えた状態です。新しい材料で築盛した状態から削りだしていくわけです。4番目、5番目、7番目の歯はかぶせ物の、6番目は詰め物の形態に整えていきます。この状態で型どりを行い、模型をつくるわけですね。

この状態の模式図が上のようになります。新しい材料を含め「土台」となる状態に形を削り整え、かぶせ物や詰め物がきれいに入る状態にするわけです。

仮歯と仮の詰め物をセットした状態

かぶせ物になる歯には仮歯を、詰め物になる歯には仮の詰め物をセットし処置を進めていきます。処置に期間がかかる場合は、仮歯を外し、処置をして、また仮歯を戻して、といった具合になります。

セラミックの完成

セラミックがセットされた状態

最終的に、技工所で製作された修復物をセットし、処置を完了していきます。

精度の高い処置を積み重ねることで、隙間の無い状態でセットすることができます。

この状態でのレントゲンをみてみましょう。

処置後のレントゲン1

 

 

 

処置後のレントゲン2

隙間なく、ピッタリと修復分がセットされているのがわかります。

ただし、この状態になってはもはや内側がどうなってるかなんて、全く分かりませんよね?

このようにして、患者さんには見えない部分含めしっかりと処置を行うことで、より長く安心して使っていくことができるわけです。

まとめ

今回は奥歯の銀色の詰め物のやり替えについて、その過程を具体的にみてみました。この記事で重要なのは

・保険治療は往々にして適当な処置がされている

ということと、

・そのリカバリーをする行程は時間も労力もかかり大変だけど、患者さんには全くみえない部分である

ということ。

以前の記事で

「適当な歯科処置は簡単に歯の寿命を短くする」

と書きましたが、このような虫歯も、ずっと放置すればどんどん大きくなり、残すことができる健全な歯の量も減っていきます。

虫歯があまりにも深ければ、神経の処置が必要になることもあるでしょうし、最悪の場合抜歯となるケースもあります。

今ある歯を今後も永く使っていくために、しっかりとした治療を行うことを強くおすすめします!😊

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