【正しい咬み合わせ】って、どんな咬み合わせ?


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こんにちは、現役歯科医師兼臨床歯科ライターの管理人です。

今回は 「正しい咬み合わせとはなにか?」 という題で記事を進めてみようと思います。

ただ、この「正しい咬み合わせとはなんぞや」なんて話題、本当に突っ込んだらそれこそ本が1冊書けてしまうような項目!!なので、いくつかポイントを絞って記事にしようと思います。

最近話題のマウスピース矯正の台頭もあり、矯正治療がより身近でハードルの低いものとなりつつあります。だからこそ、正常な咬み合わせ といったことに対してある程度正しい知識を普及させることもより大切になってきていると思います。

咬み合わせに対する正しい理解をすることで、ご自身が矯正治療を受ける際の助けにもなりますので、是非参考にしてみてください。

正しいかみ合わせとは?

矯正治療を行う ということは、当然咬み合わせが悪かったり、見た目が悪かったりといたった事を理由に治療をすることになります。

治療をするということは、ある程度の「ゴール設定」がないと、どこに向かうのか分からない治療になってしまいますので、「このような咬み合わせを目標に」治療を進めるという設定をしていくことになります。この”設定”は万人共通かというと、勿論そんなことはありません。各人にとって理想的なゴール設定というものが存在するため、今この記事を読んでいるあなたと、あなたの友人も、ぼくも、矯正治療をするとなった場合のゴール設定は違ったものになってくるわけです。

ただし、当然なんでもありというわけでもありません。矯正歯科学 という学問の中で、目標とすべきかみ合わせにはいくつかの条件や項目があり、それらを満たした上での設定になるのは矯正治療が担保すべき最低限のルールといえます。

その「目標とすべき咬み合わせ」の「条件」とは一体どのようなものがあるのかみてみましょう。

奥歯の位置関係

多くの場合、患者さんは前歯の見た目を気にして来院されます。例えば、前歯がガタガタしている とか 前歯が出てるような気がして とかがよくある例でしょう。

しかし、矯正治療を行うとなったら奥歯のかみ合わせを無視して前歯のガタつきだけを治すといったことはあまり褒められたものではありません。咬み合わせというのは難しく、奥歯から前歯まできちんと揃うことでようやく機能と審美性が両立されます。なので、患者さんからしてみれば関心度の低い奥歯、ですがとても大事な項目です!

上の写真は、「正しい咬み合わせ」とされているものの模型を右側から見たところです。つまり、右側の咬み合わせの理想的な状態だと思ってください。

分かりやすく番号をつけると、

このようになります。つまり、ヒトの歯というのは特に過不足が無ければ、片側で上下7本ずつ、上下左右で28本の歯で咬み合うようにできています。この7番目の歯の後ろに生えてくるのがいわゆる おやしらず です。

よく見ると、同じ番号の歯は完全に向かい合っているのではなく、ちょっとだけ互い違いにズレてるのがわかりますか?とても大事なポイントなのでくどいですが、更に分かりやすくデフォルメしてみます。

簡単のために3番目~6番目だけを切り取って位置関係を描いてみるとこんな感じです。(これは右側の咬み合わせであることに注意してください!)

つまり、奥歯というのは反対側の同じ番号の歯とだけ ではなく、その隣の歯とも咬むようになっています。これを「1歯対2歯の咬合」などといったりします。咬合というのは咬み合わせのことで、奥歯は下の歯が少しだけ上の歯よりも前方に位置することで山と谷が咬み合い、機能するようにできているのですね。

お分かりいただけたでしょうか?専門的な用語ではⅠ級咬合とよばれる、このような咬み合わせが、奥歯の正しい位置関係ということをますは理解しましょう!

咬み合わせの”深さ”

次に、咬み合わせの深さです。咬み合わせに「深さ」とはどういうことか?と思われるかもしれません。これに関して百聞は一見に如かず、まずは2枚の写真をご覧ください。

過蓋咬合(Deep Bite)
開咬(Open Bite)

2枚の写真はそれぞれ全く別別の方の咬み合わせを正面から見たところです。上の写真を見ると、前から見たときに下の前歯が全然見えませんね?これは咬み合わせが「深い」ために、下の前歯が上の前歯に被さってしまっている状態で、過蓋咬合 や DeepBite ディープバイト といわれる不正咬合の一つです。逆に、下の写真はどうでしょうか?下の前歯はしっかり見えていますが、それを通り越して上と下の前歯の間に隙間が空いてしまっています。これは開咬 や OpenBite オープンバイト といわれる不正咬合のひとつで、前歯が接触していません。

これを踏まえて今度は模型の写真を正面から見てみましょう。下の前歯のだいたい2/3くらいが見えている状態で、深すぎず、浅すぎない 適正な咬み合わせの「深さ」といえます。このように、咬み合わせには上下的な深さという概念があり、これが適正であることも正しいかみ合わせの大切な条件となります。

念のため、前歯の咬み合わせの深さを横から見た図をデフォルメして提示しておきます。

このように、DeepBite~OpenBiteでは前歯の重なり方が全然異なるのがよく分かると思います。これは前歯の機能にも影響し、例えばDeepBiteの場合は顎が前後左右に滑るような動作が邪魔されたり、それによって過度に歯がすり減ってしまったりします。OpenBiteの場合は前歯の接触がないために食事の際に物を咬み切りづらかったり、奥歯でしか咬んでいないために奥歯の負担が過剰になってしまったりという弊害が出てくるわけです。

真ん中の位置

これはとても分かりやすいですね。上の歯列の真ん中の位置 下の歯列の真ん中の位置、そして顔の真ん中の位置 これらが1直線上にきれいにそろうと、美しい笑顔となります。

ただし、そもそも顔の真ん中とはなにか?鼻が曲がっているひともいれば、左右対称な顔というのは存在しません。したがって、顔の中心というのはあくまで瞳孔の中央点や鼻筋のラインが目安としてあるだけで、大切なのはパッと見たときに違和感がないかどうかです。

また、上下歯列の真ん中の位置が合う という事にもあまり大きな意味はありません。先ほども触れたとおり、咬み合わせというのは非常に微妙なバランスの上に成り立っており、どこか1本でも形や大きさのおかしい歯があれば、そのしわ寄せがどこかに出てきます。左右の歯の大きさが全く同じなどということはないですし、上下の真ん中の位置を優先するあまり咬み合わせがおろそかになったら本末転倒です。奥歯の咬み合わせの位置関係がそろい、なおかつ各々の歯の大きさにあまりにも逸脱したものがなければ、おのずと真ん中の位置は概ね合うものなので、その範疇を許容範囲と考えるのが良いでしょう。

歯列の形

まずは模型の写真を見てみましょう。

上の歯列
下の歯列

このように歯列というのは奥歯から前歯 そしてまた奥歯へと緩やかな放物線を描くような曲線上に並ぶのが理想とされています。アルファベットでいうと “U” の字が当てはまるでしょうか。

そして、この U の字状の放物線を描く歯列はちょうど上の方が下よりもひとまわり大きくなっており、全周に渡って上の歯列が下の歯列を少し覆うような咬み合わせとなるわけです。

上の2枚の写真は、全く別の人の上の歯列写真ですが、見ての通り、こんなに違うものなのですね。勿論、極端な例を出してはいますが、歯列の形といっても人それぞれというのがよく分かっていただけると思います。

また、「らんぐい歯」などと言われる状態は、専門用語では「叢生」といいますが、簡単にいうと「ガタついている」ということで、これもやはり正しい歯列の形が崩れてしまう原因となります。上の写真は下の歯列の写真ですが、前歯を中心に”ガタつき”が強く、赤い歯列のアーチ形態から歯はあっちこっちへはみ出してしまっています。いわゆる八重歯などもこのような状態のひとつですね。

このように、歯1本1本がアーチ状にきれいに並び、そしてそのアーチの描く放物線が狭すぎず、広すぎず、きれいな形態であるということも、正しい咬み合わせを構築する上で重要なポイントだということが分かりました。

上下の歯の被さり関係

これは、”歯列の形”や”咬み合わせの深さ”と密接に関係していますが、専門的な言葉でいうと「被蓋関係」といいます。上の歯と下の歯がどのような位置関係にあるか、ということなのですが、具体的に写真をみてみましょう。

先ほど歯列の形の部分でも触れた通り、歯列のアーチの形は上の方がひとまわり大きいため、結果写真のように、全周にわたって上の歯が少しだけ下の歯を覆い隠すような形で咬み合っていますね。

クロスバイト
シザーズバイト

上の2枚の写真はどうでしょう?先ほどの模型の咬み合わせと何が違うかおわかりでしょうか?

上の写真は前歯に注目です。

上の歯よりも下の歯の方が前に出てしまっていますね?このような状態を部分的な反対咬合やクロスバイトといったりします。特にガタつきなど多い際には頻出の症状で、上の2番目の歯に特に多い症状といえます。

下の写真は前から4番目の歯に注目です。

上の歯のほうが出ているのはいいのですが、それが行き過ぎてしまい、裏側の山の部分まで下の歯を乗り越えてしまっているのがおわかりですか?このような状態を鋏状咬合やシザーズバイトといいます。上の7番目の歯で非常に多いですが、このように前から4,5番目の小臼歯でも生じることがあります。

このように、上の歯とと下の歯の位置関係がどのようになっているかも、正しい咬み合わせの条件を考えたときには重要な項目となってきます。上の図の真ん中の状態のように、しっかりと歯の山と谷が咬み合わないと、歯というのはしっかりと機能しないですし、シザーズバイトやクロスバイトのような状態では歯に異常な力がかかり、他の病態の原因になってしまったりもします。



まとめ

さて、いかがでしたでしょうか?

今回は「正しい咬み合わせとは何か?」という壮大なテーマをみてみましたが、冒頭でも述べた通り、これをしっかりと追及すると本1冊できてしまうような内容です。

あくまでも重要なポイントをかいつまんで説明しましたが、

・奥歯の位置関係

・咬み合わせの深さ

・真ん中の位置

・歯列の形

・上下の歯の被蓋関係

これらが正常な状態にもっていく、あるいは可及的に近づける作業が矯正治療になるわけです。勿論、症例によっては特殊な歯の位置関係にもっていったり、抜歯矯正では歯の本数も変わってきますから、治療設定のひとつの形でしかありませんが、「正しい咬み合わせ」の条件を知ることでご自身の今の状態がそれとどのように違うか、鏡を見たりしてみてある程度判断ができるのではないでしょうか?

これから矯正治療を考えている方、現在治療中の方も、ひとつ参考にしてみてください😊

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